この記事に書いてあること
先に言いますが、この記事ではボリンジャーバンドの話はしていません。
標準偏差の正しい考え方と、それを投資に取り入れる方法について書いています。
正しく取り入れれば、トレードの期待値は向上します。
前置き
改めて言いますが、この記事ではボリンジャーバンドの話はしていません。
本来、標準偏差は正規分布を前提にしています。
しかし、標準偏差を謳ったボリンジャーバンドの計算に用いられている終値というのは、言うまでもなく正規分布からかけ離れています。
たとえば日経平均の終値 (1990年~2020年) はこのような分布になります。
では、どのようにすれば正規分布に近づくのかというと、「~日前からの変動率」という割合で整理してやれば良いです。
そうすれば東証一部上場銘柄全体に範囲を広げても、綺麗な分布になります。
下図は5日前からの変動率のヒストグラムですが、かなり綺麗な分布になります。
厳密に言えば正規分布より裾の広いものになっていますが、このような分布にして初めて、以下のような通説が利用できるようになります。
- ±1σに収まる確率が68.3%
- ±2σに収まる確率が95.4%
- ±3σに収まる確率が99.7%
さて、前置きが長くなりました。
本文中では、このような規格化した分布に基づいた標準偏差を株式トレードに取り入れたらどうなるか、実際の価格データを用いて書いていきます。
分析方法
今回の分析は以下の条件で行ないました。
元データ
DATA-GETから入手した株価情報を用いました。
検証対象
- 銘柄: 東証一部上場銘柄 (ETFは除外)。
- 期間: 1990/01/09~2021/02/18。
検証内容
- 終値について、5営業日前からの変動率を計算する。
- その変動率について、5日間の標準偏差を計算する (= 1σ)。
- 当日の変動率が-1σ以下のとき、翌日の始値で参入し、さらに翌日の始値で退出する。
- 以上のトレードを検証対象全銘柄について行い、トレードの期待値を算出する。
- -2σ以下、-3σ以下についても同様の調査を行う。
- ボリンジャーバンドの場合と比較する。
分析結果
標準偏差 | ボリンジャーバンド | 正しい使い方 | ||
---|---|---|---|---|
トレード数 | 期待値 | トレード数 | 期待値 | |
条件なし | 9,648,815 | 0.000300 | 9,648,815 | 0.000300 |
-1σ | 2,579,248 | 0.000410 | 3,008,824 | 0.000534 |
-2σ | 22,965 | -0.001152 | 1,583,056 | 0.000838 |
-3σ | 14,449 | -0.001807 | 741,576 | 0.001134 |
- ボリンジャーバンドの方は、-1σで期待値が上がったかと思ったら-2σや-3σの場合は返って期待値が下がりました。
- 標準偏差を正しく使った場合は、-1σから-3σまで期待値は向上し続けました。
- 前置きでも言及したとおり裾の広い分布であるため、-3σ以下の場合でもある程度のトレード数が発生しています。
考察
今回の分析結果から言えることは、1つに集約されます。
標準偏差の概念を正しく取り入れれば、トレードを有利にすることができる、ということです。
ボリンジャーバンドの開発者は、なぜ終値で計算しようと思ったのでしょう。
それはさておき、この標準偏差の使い方をトレードに取り入れたらどんな成績を示すか、ぜひバックテストしてみたいところです。
まとめ
- 標準偏差の概念は、正規分布を前提にしています。
- 標準偏差を謳ったボリンジャーバンドは終値を使っていますが、終値は正規分布からかけ離れています。
- 一方、価格の変動率は正規分布にかなり近くなります。
- 標準偏差の概念を使うなら、ボリンジャーバンドよりも価格変動率の方がパフォーマンスは良くなります。
コメント